フェイントが大事。漫画『柔道部物語』四巻の90ページ目を読んで覚醒した男

めっきり秋めいてきましたね。

私は暑すぎた夏の最中にGoogleで「夏 タバコ 不味い」と検索をしました。
部屋でタバコを吸うことが許されていない私は、日陰のない外のスペースで喫煙しているのですが、炎天下で吸うタバコが、とにかく死ぬほど不味かったからです。

煙を吸い込んでいる感覚がいっさいなく、感覚がないものだからとにかく強く吸い込んでしまい、口の中や喉がピリピリと痛くなるのです。

調べてみると、昔から多くの人が同じ思いを抱いていて、当たり前の常識のように「禁煙するタイミングはタバコが不味くなる夏がおすすめ」とまで書かれてありました(その反対で冬はタバコがとにかく美味しいのですって)。

スーパーでは少しでも安く買い物をしようと心がけているのに、こんな不味いもののために一日一箱600円も使うだなんて馬鹿げていると思った私は、この猛暑を機に、葉っぱの量を調節して経済的な喫煙ができる手巻きタバコ(シャグ)に変えました(やめへんのかい)。

では本題に入ります。

私は高校三年のとき、体育の授業中に行われた柔道のトーナメント戦において、男子生徒総勢40名(2クラス合同)の中で一番になった経験があります。

ラグビーが強くて有名な学校だったので、ガタイのいい生徒が大勢いました。
私は小学六年間サッカーを習い、高校三年間は部活動をせず、地元の絵画塾でデッサンを習っていました。
特に腕力が強かったわけでもなく、背の順は前から三番目あたりで、小柄な中肉体型でした。

そんな私が、

  1. オタッキーな感じの大柄なやつ
  2. バレー部のエース
  3. サッカー部のエース
  4. ラグビー部のフォワード
  5. ラグビー部のバックス
  6. 柔道部の主将

これらの対戦相手を倒していくことができたのは、当時大ファンだった小林まこと先生の漫画『柔道部物語』四巻の90ページ目に「小内刈り(こうちがり)」という技の決め方が丁寧に描かれていて、「いつかどこかで誰かにこの技を試してみたい」と思いながら日々を過ごしていたからです。

丁寧といっても、そのページには四つのコマしかないのですが、「内股(うちまた)」という技を仕掛けることで、その後「小内刈り」が綺麗に決まるということが絵だけで理解できるようになっていました。
小学六年間サッカーを習っていた私は「柔道にも、サッカーと同じように、相手の意表を突くフェイントがあるのだ」と気づきました。

小内刈りを綺麗に決めるには

まずは相手を引きつけて思いっきり(背負い投げや内股などで)投げると見せかけます。
相手はその攻撃に抵抗するため、体の後ろ方向に重心を移動させます。
その重心移動の力を利用させてもらうかたちで、一気に相手を後ろ方向に押し倒します。
その時、相手の両脚の間に自分の足を入れて引っ掛けます。
足を内側に引っ掛けていれば「小内刈り」、外側に引っ掛けていれば「小外刈り(こそとがり)」となります。

さまざまなフェイント

バレーボール、テニスなどの球技では、ほとんど全ての選手が、強打と見せかけてボールを軽く落とすフェイントを効果的に使っています。
バスケットボールやサッカーでは、渡す相手を見ずにパスを出す「ノールックパス」、野球ではピッチャーがまったく同じフォームから速い球、遅い球、変化が加わった球を投げる「緩急つけたピッチング」など、「相手の意表を突く」「相手の裏をかく」「相手のタイミングをずらす」攻撃の方法がいくつもあります。

あまり他で聞くことのない特別なフェイント

私は「内股からの小内刈り」を確実に決めるために、さらにある特別なフェイントを加え、トーナメントの七戦ともすべて、同じパターンで勝利をしました。

まずは、対戦相手が誰であろうとも「小内刈りで勝ちにいく」と決めます。
そして「何かを狙っている」ということがバレないように、相手の目は見ません。
自分から相手に近づき、攻撃を仕掛ける素振りはいっさい見せず、お互いに前襟を掴み合います。

このとき、相手に先制攻撃を許してしまうと、こちらの予定が狂うので、十分に間合いをとりながらも、前襟を掴んだらすぐに、お花畑が大好きな女の子くらいの力で「え〜い」と投げる姿勢をみせます。

その攻撃は相手が体制を崩さず、腕の力だけで防ぐことができるくらい弱いものとします。
そしてその後、「ダメだ、勝てそうにない」といった感じの「技が失敗したときの表情」を作ります。

すると相手は「こいつ、Mr.オクレくらい弱いんじゃないか?余裕で勝てそうだ」と油断をします。
そして、わずかに前襟を掴む力が緩み、一瞬の隙が生まれます。

その瞬間、『柔道部物語』四巻の90ページ目のとおり、全力を出して「内股」を仕掛け、相手の抵抗する力を利用して「小内刈り」を決めます。
相手が油断をしてから五秒もたたずに「一本」で試合が終わります。

リソース(資源)について

リソース(資源)がないという人がいます。
リソースがないのは問題ではありません。
リソースを得られるような状態にしていないだけです。

リソースフルの状態にもって行きます。
リソースフルとは、自分の持っている資源や能力を最大限に発揮している状態をいいます。

リソースフルな状態でいるときには「自分には能力ある」「自分にはできる」という思考や感情を持っている状態になります。

そして、それに相応しい行動を行うことができ、あなたの能力を普段以上に、引き出すこと、または発揮することができます。
あなた自身に対する自信につながります。

しかし、リソースフルな状態を常に保つことは、現実的には、簡単なことではありません。

大切なことは、「あなたが必要な時に、リソースフルな状態を作り出すことができる」ようになることです。

過去におけるリソースフルな状態を思い出すことによって、何か困難にぶつかった際にも、「自分はリソースがあふれている」という観念を生み出し、困難に勇気をもって立ち向かう「力」を与えてくれます。

五十嵐 久「リソース(資源)は誰にもある

私には「小学六年間サッカーをしていた」というリソースがありました。

相手の意表を突く、裏をかく、タイミングをずらす、欺く、騙すといった技(フェイント)を一生懸命に習得しようと努めた六年に及ぶサッカー経験があり、漫画『柔道部物語』を読んだことで、柔道の試合においても自分の能力を最大限に発揮できたのだと思います。

これをお読みになられているコーチの皆さんは、クライアントが学生時代にのめり込んでいた習い事や部活動のことを気にかけていますか?
そこには、今現在のクライアントが自信を持って一歩を踏み出すためのリソースがあるかもしれません。
私自身は、味方がシュートを決めるためのアシストをすることに喜びを感じていました。
今現在の仕事においても、どうすればクライアントにいいパスを出すことができるか、そんなことを毎日考えています。

追伸

トーナメント戦を勝ち上がった私は、柔道部の顧問でもある体育教師と一対一で戦うことになりました。
試合の開始早々、払い腰という技をくらい、二秒で敗れました。
大勢の男子生徒が笑い声を上げる中、決勝で戦った相手、柔道部の主将だけは笑っていませんでした。
彼はきっと「絶対に油断しない男」として、その後の人生で、多くの成功を掴み取っているのではと思います。

最後に「弱いフリをして勝利を掴むだなんて、なんて汚い奴だ」とお思いの方に、一言だけ言わせてください。

私のことは嫌いになっても、コーチングマガジンのことは嫌いにならないでください。

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